子どもの認知特性と 指導カリキュラムとのズレ

 2010-10-22
りんちゃんは、3年生の女の子。 地域の小学校の支援級に在籍しています。

ダウン症のお子さんですが、幼稚園の時、テレビ番組の 「はじめてのおつかい」 に出演したこともあるので、もしかしたら覚えていらっしゃる方もおられるかも知れません。


そのりんちゃんが、昨年の夏から、毎週木曜日に90分のレッスンを受けてくれています。

その90分は、とってもにぎやかで楽しい時間です。

おしゃべりで、何にでも一生懸命な女の子、

以前は少し暴走ぎみな所? もありましたが、今では全くそんなことを感じません。


昨日のレッスンのことです。

1枚だと思っていたプリントが、3枚もあることに気がつき、とたんに文字に筆圧がなくなってしまいました。


> あれ~、どうしたのかな、1枚目は 「はなまる」 だったのに、これじゃあ、ちっちゃいまるしか、あげられないなあ~、あ~残念、お母さんがっかりするかもね・・・

( この時、りんちゃんの目がぎらりと光り、スイッチが入ります )

> 先生、このプリントはなし・・・  もう一枚新しいのをください!!


りんちゃん、今度は目つきを変えて、とてもていねにのそのプリントに取り組んでいます。

もちろん、私は1枚目以上に大きい 「はなまる」 をつけてあげました。

とたんに、やる気、まんまんです。 

こんなふうな支援が、毎回クリーンヒットするのですから、私としては、こんなにやりやすいタイプはありません。

本当に、達成動機の高いお子さんです。

楽しい90分のレッスンが、あっという間に終わってしまうのです。


今、私は、ご家族と共に、この子の豊かな数量感覚の育成を目指して取り組んでいます。

これは、何としても道筋を見つけなければ申し訳の立たない、文字通り、ご家族の悲願であると、受け止めています。


りんちゃんは、文字はとてもきれいに書けますが、数量の処理は継次的な傾向が強いようです。

それと、ワーキングメモリーの中で、同時に2つのことを処理する力がやや弱いように思われます。


例えば、

「おさむくんは、つみきを6こつみましたが、そのうち2こはものがあたって、おちてしまいました。いま、なんこのつみきがのこっていますか」

という問題があったとします。

これだけ豊かなコミュニケートができるりんちゃんが、どうしてこの程度の問題につまずいてしまうのでしょう。

私は、そのことが、不思議で仕方がありませんでした。


視覚情報から、それを音声に変換することは上手です。

しかし、それと同時に、それをイメージ化することができにくいようです。


> 先生が読んであげようか?

こういうと、たいてい 「うん」 と答えます。

現時点では、聴覚性の入力の方が、内容をイメージ化しやすいのです。

この辺りにも、継次処理優位の特性が伺えます。


しかも、その内容をワーキングメモリーの中で、操作するのはまだ抵抗感があるようです。

では、どうするか?

そのイメージを、半具体物で抽象化して、紙に書けばいいのです。 算数的な活動を、いつでもできる紙の上で展開させるのです。


> 「 おさむくんは、つみきを6こつみました。」  じゃあ、つみきとおなじ数だけ○を書いてごらん。

( りんちゃん、紙に○を6個書きます。 )

> 「 そのうち、2こは、ものがあたって、おちてしまいました。」   じゃあ数は大きくなるの、小さくなるの?

( この 「 数が大きくなる? 小さくなる?」 という言葉が、演算決定の際に、りんちゃんには一番ピンとくる言葉になりました。)

> ちっちゃくなる!

> そう、それじゃあ、これは何算?

> ひき算!

> 正解~、じゃあ、何引く何?

> 6ー2

> 大正解~、じゃあいくつになるかな?

 ( りんちゃん、○に端から / を二つ引き、残りの4つを、1・2・3・4 と数えます )

> わかった、4だ。

> すごーい、ちゃんと、自分で思い浮かべてかくことができたね~



もちろん、こういった支援は、段階的にフェードアウトしていきます。

私が読まなくても、自分で読んだ言葉をイメージ化できるように、

紙に書かなくても、メモリーの中で、数の処理ができるように、

継次的に数えなくても、ぱっと同時的にそれが 「4」 と認知できるように、

イメージ化した内言語をもとに、自分自身で演算決定ができるように、

メモリーの中で、数の合成・分解ができるように、

やがては、位取り記数法の、概念がきちんと身につくように・・


今すぐには無理かも知れません。

でも、軸をぶらすざに、これを100回やったら、どうでしょうか?

その景色は、必ず変わると、私は信じています。


数ひとつをとっても、子どものわかり方の程度は、様々です。

7+8を15と暗記しているのと、7の補数が瞬時に3とわかり、頭の中で加数の8を3と5に分解して10を合成し、残りの5を合わせて15というのとが、同じであろうはずはありません。


例えば、カリキュラムのどこかでつまずいて、そこから先に進みんくくなった場合には、課題分析をして、そのどこにエラーが生じているのかを見つめた上で、その支援を出し入れしながら、ブラッシュアップしていくプロンプトフェーディング法が効果であると、私は考えています。


私は今、自分の力量不足を、痛感しています。

完全個別指導、毎週90分の機会を与えていただきながら、りんちゃんについて、これだけのことを理解するのに、こんなに時間がかかっているのです。

回り道した分だけ、きっと深い理解になったとは思っていますが、それにしても、時間がかかりすぎです。せめて、このことを無駄にしないように、今後の実践に気合いを入れなければなりません。


りんちゃんのお母さんを中心に、JDS(日本ダウン症協会)岡山支部で、数の育てに対する学習会を開こうという話になっています。

こういう場で、伸びた実践を是非とも報告したいものです。


初めてお母さんが私の所に相談に来られたときから、お母さんの、この子に豊かな数の力を付けたいという、深く、そして強い気持ちは全く変化がありません。

このことが、どれだけ私の気持ちにエネルギーを注いでくださったか知れません。

何としても、この願いに応えたい。

神様、他に何もいりませんから、瞬時に子どものつまずきが見抜ける才覚と力量を、私に与えてください。



原因さえ見抜けば、打つ手は必ず見つかるはずです。

こうした実践が、何らかのヒントになり、少しでも多くの子の幸せにつながっていくことを、私たちは願ってやまないのです。



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Author:SHINOBU
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