構造化と環境調整 そこから伝わる子どもからのメッセージ

 2010-10-04
あるダウン症の男の子のことです。

時々紹介させていただいていると思いますが、あまり表出言語のみられない小学生の男の子です。


教室に入ってくると、まずお父さんにバイバイをして、その日の教材がどうなっているか、机の周りを見に来るのです。

そして、いきなりはいすに座らず、本棚のある休憩のエリアに、どっかりと座ります。


私はいつも、そこで 「今日はいい天気だね~」 とか、「前の週、運動会だってでしょ、どうだった?」とか、声かけをするようにしています。

表出言語はなくても、豊かな表情がそこにあるのです。

私は、5分と決めていますが、あたたかな通い合いの気持ちが流れ込んでくるような感覚になります。

私たちにちとって、とても大切なコミュニケートの時間になっているのです。


「じゃあ、勉強しようか?」

と、声かけをしても、すんなりとは席に着きません。

いつも、わざと寝っ転がってみたり、いつのすぐ近くまで来て立ち止まったりするのです。

とっても、かわいいお試し行動です。


私はいつも、「こらこら、早く席に着きなさい」 と言いながら、にっこり笑顔で、やさしく肩を押してやります。

肩に手を当てると、彼の足が勝手に席の方に動いています。

本当は彼、早く勉強したいのですが、「こらこら、早く勉強しなさい」 と、私に言ってもらいたいのです。


私は、肩に置いた手から、彼の足が自然に席に向かうのを感じることで、

また彼の方は、私の置いた肩の手から伝わる、やさしいタッチを感じることで、

通い合う相互の信頼感を深めているのです。



彼の学習プログラムは、彼の反応を見て、毎回微調整をしています。

以前手を添えていた書字の学習は、いつの頃からか、彼が手を添えることを嫌がるようになりました。

ならばということで、今の彼のニーズにあった内容の物を提示して、私は手を添えないようにしました。

つまり、プロンプトフェーディング法から、スモールステップ法へシフトチェンジしたわけです。


形にはやや不正確な面は残りますが、筆脈というのでしょうか、以前はガタガタ波打つような文字であったものが、今ではそれがだんだんまっすぐと、しっかりとした文字になってきました。

この先も、習熟の段階に合わせて工夫していかなければなりませんが、今回は切り替えて正解だったと思います。


毎回、こうした細かい修正を繰り返しながら、今の学習スタイルがあるのです。

驚くべき内容は、他にもあります。

それは、彼がその細かい修正を、きちんとチェックできているということです。


例えば、「パソコン → カード → ロールプレイ」 という流れで組んでいたプログラムを、「カード → パソコン → ロールプレイ」 に変更するとします。

もちろん、紙にも書いていますし、言葉も添えますが、初めて変えた時は、やはり一瞬手の動きにとまどいが伺えます。


ところが、2回目となると、とまどいは見られなくなります。

先週変えたことを、彼はしっかりと覚えています。

カードの学習が済むと、自然にマウスに手が伸びているのです。

私にとっては、記録を見ないと分からないような細かい事でも、何も言わなくたって、彼はちゃんと理解できているのです。


私たちには、非言語のコミュニケーションツールがしっかりと構築されています。

場の構成という私のメッセージと思いを、いつも彼はちゃんと理解してくれているのです。

そこに明確な意図がある場合は問題ないのですが、私がうっかり手順まちがえたりすると、一瞬手の動きが止まったり、ちらっとこっちを見たりしますから、まいっちゃいます。

毎回、かなりのプレッシャーかけられちゃっています。 (笑)


先日、井上雅彦先生のブロク を拝見していると、「構造化を支える随伴性」 (2010-09-21)  という記事の中で、「私自身は 「構造化」 という言葉よりは 「環境調整」 という方がしっくりきます。」と述べられておられました。


固定的にすべきこともあれば、不変でありながらも絶えず調整が必要なことがらだってあります。

要は、その子の今がしっかりと見えること。

本質をつかめばつかむほど、それは板につき、自然でシンプルなスタイルが生まれてくるのです。


むずかしい言葉や先端の理論だけをとってつけても、子どもが動かなければ何にもなりません。

毎週彼との学びを見つめていくことによって、どれだけ私の力量が高まったか知れません。

もしかしたら、彼は達人ではないかと、本気で思い始めています。




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