fc2ブログ
 

1年以上にわたる家族の辛抱

 2010-05-15
私の教室に、通ってきてくれている小学校2年生の男の子がいます。

就学前から通って来てくれているので、かれこれもう1年以上になります。

毎週土曜日、ほとんど休みなく、いつもぴったり定時に来てくれます。


大変熱心なご両親で、よく勉強され、家庭環境もしっかりと構造化されているようなご家庭です。

そんなことは、決して表面に出さず、いつも 「ゆっくりのペースでこの子を見守ってやってください」 「先生を、全面的に信頼し、お任せをします」 と、言ってくださいます。

が、言語や数量の指導の話になると、その辺の先生が裸足で逃げ出すほど、経験も知識も熱意も豊かなご家庭です。


この子に、数量の概念を培いたい、言語を媒介としたコミュニケートの力を育てたい、というのは私の悲願でした。

しかし、当初は全く指導が成立しませんでした。

ありとあらゆる方法で、手を変え品を変え、アプローチを試みて来ましたが、なかなか自分のイメージ通りに指導は進んでいきませんでした。

それでも、ご両親は、「いつもありがとうございます」 と、深々と頭を下げて教室を後にされていきました。

何とかして、このご両親の願いに、少しでもお応えしたい。

その後姿を見送りながら、私はいつもそんな思いを胸に抱いていました。


そうして、1年以上の月日が過ぎていったのです。

時には、私の思いばかりが先行して、この子の表情が曇ってしまった時もありました。

そんな時には、いつも 「ゆっくりのペースでこの子を見守ってやってください」 という言葉が、頭の中で何度も何度もリフレインしていきました。

あきらめてはいけない、でもけっしてあせってもいけない、指導中、いつもこのことをかみしめながら実践を続けていきました。


その子が、最近になって少し変わってきました。

数の1対1対応のスキルが、かなり精査されてきました。

数唱とポインティングが、ずれなくなってきたのです。

「1・2・3」 という数唱が、個々の事物としっかりと対応できるようになり、りんごを3つポインティングして必ず 「3」 と認知できるようになってきました。

プリントのチューリップを 「1・2・3」 とチェックして、数字の 「3」 と線を結ぶ作業も、さまになってきました。

お買い物ゲームで、「なすび2つをください」 と言うと、ちゃんとなすびを2つかごに入れ、十円玉を2つ、私に渡せるようになってきました。


おまけに、「おしっこ出そう」 と、ちゃんと言語で私に伝えることもできるようになってきました。

10分も経たないうちに、またおしっこというので本当かなあと思いながら、トイレに連れて行くと、しっかりとおしっこをし、まさかと思う3回目も、しっかりと出ているのには、さすがに驚きました。

子どもは、信じてやらなくてはだめですね。

でも、ちゃんと言語で伝えられるのです。

私たちの関係も、育ってきました。


書字プリントで、ハネに気をつけてひらがなを書きなさいと指導し、できなきゃ小さい○、できたら大きい花丸をつけてやると、ちゃんとはねに気をつけてていねいに書くことができりうようになってきました。

「すごいね」 とほめてやると、天使のような笑顔で、体をすり寄せてきます。

私はこの日、この子との間に、あたたかい感情が脈々と流れ込んでくるのを感じないではいられませんでした。


ここまで来るのに、1年以上、まさに今日がこの子との記念日になりました。

ここまで来れば、やりたいことは、いくらでも見えてきます。

一年間耕し続けた畑から、ちっちゃい芽がやっと見えたのです。

本当に、よくここまで辛抱し続けてくださいました。


このちっちゃな芽を、決して枯らすわけには行きません。

小さくともよいから、何としても花を咲かせ、実をつけたいものです。

まさに希望の光。


この日、大阪から通って来てくれた子も、むさぼうるようにカード学習に取り組んでくれました。

教室に入るとうずくまって、なかなか指導にならなかったあの子です。

向かう先には、様々な道筋が見えてきます。


1日のうちに、こんなことが2つも起きるなんて、めったにあることではありません

子どもの育ちは、教育の中核をなす学校と、それを支援するチームの多くの先生方の努力の賜です。

私の力なんて、ほんの微々たるものに過ぎません。

改めて、そこに主体者としてのご家族の深く強い気持ちがあればこそ、山も動くものだと感じざるを得ません。

この先、また多くの課題に向き合っていくのは、覚悟の上です。

それだけに、何よりも、次回の指導が、今から楽しみでならないのです。


私が、今夜いただくビールの味は、格別なものに決まっています。

今日の仕事は、これにて終了、本日閉店です。

今日は、本当にいい日でした。


にほんブログ村 教育ブログ 特別支援教育へ

↑ 大切さを全国に伝えたい! 応援の1クリックを よろしくお願いします。 ↑
「すべての子どもに 集団での学びと 特性に応じた適切な個別指導の場を」





コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://shinobu1.blog117.fc2.com/tb.php/786-8261e1f9
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫