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言語表出のない子への コミュニケーション指導

 2010-05-11
私の教室には、表出言語があまりない子も来てくれています。

今年の春、養護学校の高等部を卒業した大輔君もその一人です。

大輔君との出会いについては、昨年の3月の記事 「 君の学びが未来を拓く重度の困難も打ち砕く学びの力 2009-3-18 」 で紹介をさせていただきました。

卒業後も、2週間に1回、私の所に通ってきてくれています。


お母さんの情報を参考に、言語と数量に関するいくつかの教材を作成してみました。

指先によるポインティングが出来ると聞いていましたから、たとえば 「23+51」 のような問題を提示して、答えの 「74」 を指さすような学習に何度かチャレンジしてみました。

以前には出来ていたと伝えてくださったこと、家では出来たと聞いていたことが、私の所へ来ると、あまりできない場面が多かったので、私はとまどいました。

時々目をつぶってしまうことがあって、正直それが一番こたえました。


私の所には、大輔君以外にも言語表出の少ない子もいます。

その子の活動の時には、次の学習の準備ができるまで、いわゆるトランジットエリアで大好きな絵本を読んでもらっています。

ある時、ひらがなパズルを準備して、学習コーナーに来るように伝えてもねそべってちっとも動きません。

私は、その時ピンと来たことがあります。

もしかして、先週やった動物パズルがやりたいのかも?

ひらがなパズルを一旦さげて、動物パズルを用意すると、目を見開いて0.5秒くらいで吹っ飛んできました。

「動物パズルがやりたい」

ということを、彼は言語で伝えることができません。

寝っ転がるという仕草は、言語に代わる彼のメッセージだったわけです。


確かに、彼が言語でコミュニケートできるよう目指していく教育の営みがあります。

しかし、彼の行動を読み解く受容感度なくして、コミュニケーション指導のプロにはなれないと感じました。

動物パズルをやった後、彼はためらうことなく、ひらがなパズルをやりとげることができました。


最近になって、私は大輔君のポインティングにごだわり過ぎたのではないかと思うようになりました。

何もポインティングだけが、コミュニケーションではないはずです。

そればっかりを期待しすぎたのではないか?

それよりも、まず私がこの子にしてやれるること、伝えられることを工夫してみよう。

そして、この子の表情としっかり対話してみよう。

私は、そんなふうに考えるようになってきました。



言語の教材に、私は 「じごくのそうべえ」 を選びました。

いくつか読み聞かせをして、この話を聞いているときが一番表情が輝いていたからです。

聴覚性の言語のもつエネルギーが、彼の心にダイレクトに響くからなのでしょうか?


彼のためだけに作る教材ですが、このエキスは私の指導の大きなパワーとなっていくはずです。

小学校で教えていたように、場面ごとに内容精査をして、読み深めたり、語句の意味を考えたりしていきました。


教えているうちに、手でポインティングをしなくても、彼がそれを目でしっかり追っているのを発見しました。

学習への集中力も、次第に高まっていきました。

何を語らずとも、その生き生きとした表情で、学習への意欲が伝わってきました。

やっぱり、コミュニケートとは、こういう事だったんだと改めて感じることができました。

数量指導用のパソコンも、生き生きとして見てくれていました。

そして、指導が終わると、これまで見たことのないような満面の笑顔を私にプレゼントしてくれました。

私は、涙がこぼれそうになりました。


ふ~、ここまで来るのに1年以上かかってしまいました。

この日の岡山には、たくさんの雨が降っていました。

車いす専用のレインコートをかけ、駐車場から教室までやってきてくださいました。

お母さんは、その車いすのタイヤを、毎回ていねいにていねいにふいてから教室に入ってくださいます。


「あきらめないことの大切さを、大輔の育ちをお通して、私は若いお母さん方に伝えたい」

いつか、お母さんは私にそう言ってくださいました。

本当に、あきらめなくってよかったと、今、思っているのは私です。


コミュニケートの線が繋がらなくては、指導になりません。

でも、それは双方の関係が育たなくては、決して道は拓かれないのです。

彼のコミュニケート能力を高めるためにも、受容する私の感度と姿勢は重要です。

コミュニケートにかかわるスモールステップ構成の大切なポイントは、こんなところにあったわけです。


大輔君が、また一つ私を高いステージへ引き上げてくれました。

学びについても、こうした相互の関係性で高まっていくものなのです。

何だか次回のレッスンが楽しみになってきました。

さあ、積み上げはここからです。

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