大切なものが つながっていく瞬間

 2009-08-05
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「これなあに?」

「でんしゃ」

この日、かれんちゃん (ダウン症・4歳) がえらんでもってきたのは、なんと小学生向けの 「乗り物図鑑」 です。

「どこ?」

「ここ」

「いっぱいあるね」

「うん」

ちょっと前のかれんちゃんからは、こんなやりとりは考えられないことでした。

かれんちゃん (ダウン症・4歳) の、言語・コミュニケートレベルが、明らかに急上昇しています。

いやいや、ちょっと前までは、意味のある言語の表出すら、ほとんど見られなかったはず。

自宅でこのブログを見たかれんちゃんが、「せんせい」 と叫び、寝言にまで 「せんせい」 というようになった事件? 以来、私とかれんちゃんのご家族は、めちゃめちゃ盛り上がり、にぎやかになってきてきました。

ご両親は、ご家庭でのようすからは、「せんせい」 発言が、にわかに信じがたいことであったと言っています。


でも、かれんちゃんは、毎日着実に、その成長の礎を築いていたわけです。

待ちに待ったこのこのチャンスを生かすべく、かれんちゃんの夏休み集中講義??の話も、にわかに具体的になってきました。

本当にうれしい限りです。


図鑑を見終わったかれんちゃん、今度はアンパンマンの絵本をもってきました。

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アンパンマンの絵本を見ながら、「アンパンマン」 「め」 「くち」 「あか」 「きいろ」 など、次々に口走ります。

これも、ちょっと前までには全くなかったことです。

これだけ見えてきたのなら、もしや?と思い、アンパンマンの顔を即席で描いて、かれんちゃんにぬり絵をさせてみました。




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するとかれんちゃん、クーピーを使って、いっしょけんめいアンパンマンの顔をぬり始めました。

前回までは、丸をかくことはできていましたが、何かを見立てたり意識したりということではない、いわゆる錯画の状態だったはずです。

ぐちゅぐちゅアンパンマンの顔を懸命にぬっていますが、ご覧の通り、アンパンマンの輪郭からほとんどはみ出していません。

それに、「め」 とか 「くち」 とか、さかんにつぶやきながぬっています。

しかも、そのクーピーの持ち方が、5本ではなく、3本でかなりナチュラルな持ち方。

後でお母さんとお話をさせていただきましたが、きっと脳の運動野あたりのネットワークが構成されてきたに違いありません。

指の巧緻性と、言語表出との相関が高いことが、かれんちゃんの育ちからも、はっきりとうかがえるのではないでしょうか?


またまた、感動の瞬間で、私は本当に幸せものです。

でも、保育園と家庭と私の教室では、かれんちゃんはそれぞれの表情をしているらしく、ご家族にはやはり 「にわかに信じがたいこと」 であるに違いありません。

そういえば、指導の終了間際に、私が 「お母さんもう来たかな?」 というとかれんちゃんは、「おむかえ」 と言って、入り口の方へ走っていきました。

そのことをお母さんに伝えると、「そんなあ、まさか、きっと勘違いでしょう」 と言われました。

そうかなあ、と思いながらずっと振り返っていますが、やはりあれが 「そら耳」 とは思えません。

「せんせい」 でさえ、しばらく信じてもらえなっかたのです。

私は、指導のビデオ記録を真剣に検討しています。


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私が大学院にいたころのエピソードです。

私の在籍していた講座では、「抄読会」 という世にも恐ろしい営みがありました。

何が恐ろしいかというと、院生は年に2回、自分の研究にかかわる最先端の外国の論文を、数名の教授と10数名の院生の前で紹介しなければならないのです。

私は現職の小学校教員の身分のままで在学していましたから、英語の論文などそれまで見たこともありませんでした。

これは大変なことになったと、何ヶ月も前から電子辞書や翻訳ソフトなどを利用してがんばってはきましたが、発表の2週間くらい前になっても、書いてあることが何がなんだかさっぱりわかりませんでした。

だんだんと期日が迫ってきて、それはそれは絶望的な気分にさせられたのでした。

ところがある時、あるひとつのキーワードがきっかけで、それまでちんぷんかんぷんで、何が何だかわからなかったことが、一気につながり、目の前の霧がさーっと晴れていくような体験をしました。

このときのうれしさといったら、言いようがありません。

発表の内容自体はたいしたことなかったと思いますが、いわゆるAHA体験で、私にとってはとても意義深い体験となりました。


もう一つ似たようなエピソードがあります。

私がNOVAのレッスンをがんばっていた頃、レベルが上がったとたん、少人数 (先生入れて4人) のメンバーが、何言っているのかさっぱりわからない状態になったことがります。

これ、ある意味地獄でした。 70万円も先に払い込んで、ここでくじけたらその大半がパーになるのですから・・

あぶらあせダラダラで、パニックになったまま40分が過ぎていくのでした。

悩んだ私は、料金を払ってレッスンのカウンセリングを受けました。

その回答は、リスニングの強化レッスンを受けてみては? ということでした。

このままでは、どうせやっていけない状態でしたから、だまされたつもりでマンツーマンレッスンを受け、朝から晩まで英語のCDを聞き続けました。

そうしてしばらくがんばっていると、不思議なものですね〜 ある日突然、みんなの言うことが聞こえるようになったのです。

たしかそれは、レベル6の時たっだと思いますが、その後はほとんど悩むこともなくレベル4まで進むことができ、めでたく600レッスンをすべて満了することができたのです。


皆さんは、はじめて自転車に乗れた時のことを覚えていますか?

自転車乗れてしまえば、何でもないことですが、乗れない子どもにとっては大変なことです。


それと同じように、子どもが言語が話せるようになるためには、様々なプロセスが必要なわけです。

いっぱいいっぱい種をまき、水を与え続けて、待って待って待ち続けて、ある日突然、小さな芽がひょっこりと顔を出してくるのです。

ひげを伸ばし続けた脳のネットワークは、ある瞬間にピッピッと結びついていくのです。


「地道な種まきやってきて、よかったですね〜」

指導が終わり、すべり台で遊んでいるかれんちゃんの姿を見ながら、私たちはそんな話をしていました。

土からひょこりと出した大切な芽、ずっとずっと待っていた大切な芽です。

芽が育つにも、季節というものがあります。

集中レッスンと言ってくださったお母さんの言葉を、私は今、重く重く受け止めているところです。

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※ この実践記録は、適切な教育によるダウン症児の成長の可能性を、より多くの方に理解していただきたいというご家族の願いと要請を受け、かれんちゃんの表情なども含め、リアルな指導の様子を公開させていただいております。また、平成21年度、福武教育文化振興財団による研究助成をいただいています。


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