言語発達の奥の深さ

 2009-06-23
書字は苦手だけれど、音読で感動的に物語を読むことの出来る子がいます。

同じ言語でも、脳のルートが違うことを示す一つの例です。


また、難聴にも、伝音声難聴と感音性難聴とがあるように、同じ書けないという現象にも、入力系が苦手なこと、出力系が苦手な場合と2通りあります。

出力系が苦手な子には運動機能的なものにシフトした支援に、入力系が苦手な子にはそれを識別する認知系の支援に軸足を置いた支援を行います。

それは程度の問題であって、混合性のものが原因となるものもあるようです。 現実には、物事が理論通りに進まないむずかしさがここにあります。

わかってしまえば、たったそれだけのことが、リアルな子どもの活動の中から読み取っていくのは、結構ハードなことです。

特に、表出言語の少ない子の場合は、その指導者の感性というか、理解のクオリティーが命となります。

これは、すべて私の指導経験に基づいたカンのようなものに過ぎませんが・・




本を読むという行為をみたとき、字を読むということではなく、文字情報をてがかりに、フレーズを引っ張り出すように読んでいる子がいます。

花子ちゃんやしゅう太君は、このタイプですが、太郎君はそれが苦手なタイプの子どもです。

文字情報から、フレーズのかたまりを引っ張り出すことが苦手なわけです。

なので私は太郎君に対しては、聴覚性の支援を入れて、何ヶ月もかけてそのフレーズそのものを少しずつインプットしてきました。

脳の中に、少しずつではありますが、フレーズ貯金ができてきました。 記号から、かたまりをひっぱりだすことに、わずかですが慣れてきたようです。

昨日、音読の宿題で、「スイミー」 が出ていましたが、音読の宿題に対する抵抗感がかなり少なくなってきました。

音読カードに、「◎」 を付けてあげると、にっこり笑顔になりました。

幸せなことに、担任の先生が、そのカードにていねいにコメントを添えてくださいます。

太郎君、本年度も担任の先生に恵まれました。



頭で考えたことを文章化するのが苦手な子もいます。

しゃべることはできるけど、思いを頭でキープしたまま、文章化するのが苦手なタイプの子です。

言語性のメモリーキープが苦手だということでしょうか?

ならば、一旦私がそのメモリーの内容を受け止めて、文字に変換して子どもに返してやります。

太郎君の場合は、あっそうそう、てな顔をして、それを日記帳に写していきます。 太郎君の場合、視写は得意です。 ここを生かして、メモリーの容量を増やす営みを少しずつランクアップしていきます。




先日、かれんママが、視覚性のメモリーを増やすカード教材をプレゼントしてくれました。

それによると、メモリーの容量は学習によって増やすことができ、そのことで様々な課題の改善につながっていくということでした。

こうした教材は、きっとすごい値段がついているのだと思います。

しかし、何を目的に、どう使用するのかを明確にして、さらにはその子の指導にどうかみ砕いて提示するかが見えないと、なかなか持続して使用することはむずかしいと思います。


私の教材庫には、使用されずに眠っている教材・教具が山ほどあります。

実際に、現役で使用しているのは、せいぜい2割程度。

残りはまさにお蔵入りです。

自分の物にならなかった教材は、どんなに高価のものでも、ダメはダメです。

しかし、その本質がしっかりと手にあった教材は、ぼろぼろになっても、修繕しながら何回も使用します。

そういうものです。



言語が、すべて学習の基本、ということは、友里ママとの指導後の話し合いで、何度も何度も見つめてきました。

言語は学習の基本、そしてそれは国語の学習と、内容的に重なるところは多くても、すべてイコールでというはないわけです。


言語とコミュニケートの関係も、同じようなことが言えます。

言語は多くても、コミュニケーションの苦手な子もいれば、言語は少ないけど行動に勢いのある子は、コミュニケートは結構できたりします。

小数のわり算の筆算で100点とれるけど、買い物のおつりを計算するのが苦手な子もいます。

このように、そのイコールでない部分で、そこ子自身の課題が見え隠れしています。


今、私の教室に通ってくれている子どもの課題は、それぞれの子によって様々ですが、この言語の部分の大切さを、最近改めて感じるようになってきました。

これだけ毎日、子どもの育ちに真っ正面からかかわることができるのは、とても幸せなことです。

今の私には、一つの仮説から内容を実証的に精査していくことはできにくくなっていますが、多くの事例から帰納的に本質を読み解いていくことはできます。



もう一つ恵まれていることがあります。

それは、お子さんの最大の理解者であるご家族の皆さんと、毎回情報交換できるということです。


うちの教室は、リアルな実践の宝箱です。

私は、今後も、言語発達を中心課題の一つとして、自分自身の問いに、精一杯取り組んでみようかと考えています。

ご家族の理解と協力なしには、それは決して深まらない。

目的はただ一つ

お子さんの成長、そして幸せ


立場は違いますが、みなさんと私は、これからもずっと、そこの部分で同じフィールドに立って共に考えていきたいと願っているのです。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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コメント
毎日楽しみに拝見しています。
気になった点があったのですがお聞きしてよろしいでしょうか。

>本を読むという行為をみたとき、字を読むということではなく、文字情報をてがかりに、フレーズを引っ張り出すように読んでいる子がいます。

娘がまさにこのタイプです。音読の宿題をしている時、「ともだちのりすさんが・・」と書いてあっても「ともだちいるよ、いっぱいいるよ・・」と別のページの文章が口をついて出てきてしまって、自分でも「違う〜」と机に伏せて悔しがります。「一文字一文字をよく見て」というと、ホントの一字読みになり、内容がまったくわからないようです。「わからへんねん」と言っていつも悲しそうに宿題を終え、充実感とは程遠い状態に、私の見方が悪いんだなあと思いつつ、どうしていいかわかりません。

ひらがな一文字一文字はだいぶすばやく正しく読めるようになったのですが、少し考える文字もあり、清音はともかく濁音はまだまだという状態です。やはりもっと瞬時に正しくひらがなの読みが頭に浮かぶようにすることが第一歩なのでしょうか。先生はこのようなタイプのお子さんにどのような手法で指導されていますか。

娘を直接見て頂いたわけではないのでとても答えにくいかと思いますが・・・
申し訳ありません。音読の宿題は毎日なので、少しでも達成感を持たせて明日につなげてやれればと思っています。
【2009/06/23 10:05】 | がんも #- | [edit]
いつもありがとうございます。

太郎君の場合は、宿題の内容については、担任の先生にお願いして、私の方で太郎君用にアレンジさせていただき、音読にしてもスモールステップで構成させていただいています。

滑走路は長くなりますが、加速を付けるのはこの方法しかないと、私が判断したからです。

基本ブロークンでも、前へ前へが、言語習得の王道であると考えています。

テクニカルなサポートも有効ですが、メンタルな支えも重要です。

そのさじ加減が、むずかしいところですよね。

私なら、「スラスラ読めるのが、良いところだね〜」 の路線で行きますが、道順は百通りありますので、立場やそれまでのストーリー抜きには、やはり考えにくいです。

毎週月・金には学校に太郎君を迎えに行き、わずかですが、担任の先生と宿題について伺います。

こんな連携の仕方もあるんだなあ、と自分でも驚きました。

どこかで、ステキな工夫が見つかると思います。

また、教えてくださいね。
【2009/06/24 13:04】 | SHINOBU #- | [edit]
SHINOBUさんこんにちは
はじめましてのコメントになります。

小学校で、LDの通級指導教室を担任しております「西風」です。

毎回ブログを拝見しながら、きめの細やかな支援、あたたかくお子さんを見つめられるお姿に刺激を受けております。

今回のブログは、音読の話題が出ておりましたので、特に興味深く拝読いたしました。

音読の苦手なお子さんには、認知の問題、記憶の問題、表出の問題など、先生がおっしゃるように何通りもの要素がからんでいると思われます。
その中から、目の前のお子さんに合った支援をいかに構築するか、そのセンスこそが我々に求められていることですよね。

「西風」の教室では、上記の要素に加え、眼球運動の巧みさもアセスメントの視点としています。
入力器官でのつまづきがある場合、きっとその後の認知にも記憶にも影響を与えているはずだと考えています。

まだ、取り組み始めて間もない取り組みですが、眼科医やオプトメトリストとの連携を通して、支援を構築していきたい分野です。

もし、ご参考になればとおもい、拙ブログの関連ページを貼り付けております。ご意見をいただければ幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。
【2009/06/24 17:07】 | 西風 #- | [edit]
さすがにプロフェッショナルの先生、切り口がシャープですね。

とても勉強になりました。

LDの通級指導教室が、今後果たしていく役割は、ますます重要になってくると思います。

通常の学級に居場所がしっかりあって、こうしたプロフェッショナルの先生の専門的な指導があり、通常級との指導内容や特性理解の連携がある。

この形が、うまくいく一つの形ではないでしょうか?

これからも、先生のブログでしっかり勉強させていただきます。

今後ともどうぞよろしくお願いします。
【2009/06/25 07:46】 | SHINOBU #- | [edit]
う〜ん、やっぱりそうですね。
これまでの学びの軌跡やテクニカル面でのアプローチ、メンタル面のケア・・・すべてが噛み合ってこそ本当に実りある学びになるのでしょうね。

ド素人の私にはハードルが高すぎ(汗)
しかし投げてしまっては何の進歩もありませんよね。
まずは出たまんまの宿題の「教科書の音読」にこだわらず、少しずつ娘の楽しめる程度の量、難易度を探ってみます。

先生、お忙しいのにいつも丁寧なコメントを下さって感謝しています。
お体に気をつけてくださいね。
【2009/06/25 09:19】 | がんも #- | [edit]












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