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教育と医療 双方向の営み

 2009-03-16
治療教育的なかかわりという言葉があります。 私自身は、わかったようでわからない言葉だったのですが、最近その 「治療」 と 「教育」 との役割や色分けが、少しくっきりと見えてきたように思っています。

この土・日に新しく3名の子どもたちが、白ゆり教室に来てくれるようになってきました。

その時のエピソードを紹介します。


かずお君 (=仮名・小3)は、教室に入るなり、いきなり不安いっぱいな顔で、落ち着かず、バタバタと部屋の中を動き回り始めました。

私は涼しい顔でやりすごしていましたが、ご両親はかなりとまどった表情をされていました。 

5分前に教室に入りましたが、その5分をきっちり動き回り、言いたいことを言いながら、強烈な自己主張をしていました。

定刻になり、ご両親が教室から出ようとすると、「両親に見捨てられた~」 と笑わせてくれました。


さあ、ここから90分の指導が始まるのです。

涼しい顔をしていた私も、さすがに心の中ではあぶら汗

みなさんが私と同じ立場なら、どうします?

ある意味かなりの修羅場です。

覚悟と根性決めないと、この仕事はできません。

大げさに言えば、個別指導教室の看板を賭けた営みです。


これまで何回か紹介しましたが、私が心の拠り所としているものの一つに、PBS(積極的行動支援)の理論があります。

詳しい中身については、ここではふれませんが、簡単に説明すると、「子どもの不適応行動は ①注目の獲得 ②事物の獲得 ③自己刺激 (または①~③の回避) に分類され、それを解決するためには、そんなことをしなくたって、①~③の願いを叶えるバイパスを作ってやって、それで不適応行動を回避する」 というものです。

かずお君の場合は、新しい環境に対する不安があり、デリケートな気持ちの裏返しで、そのハードな内容から回避したいという気持ちが、様々な不適応言動となって現れているに違いありません。


事前のお母さんからの情報で、気象や地球に興味があると聞いていたので、私何時間もかけて、それを教材化するための準備をしていました。

かずお君、横目でそれを見ていたはずですが、いきなり食いつこうとはしません。

デリケートな気持ちが警戒心を煽り、素直な行動には結びつきません。

でも、私はやがていつかここに帰ってくるのは、わかっています。

彼が確かめようとしているのは、私がどんな姿勢で彼に向き合おうとしているのかという、私の気持ちの真実です。

本当はやりたいのに、やりたくないと言ったり、パソコンの電源勝手に抜いたり、私のアドバイスとわざと反対の事をしたりして、私を試しまくっています。

私、情緒障害児短期治療施設で3年間、それはハードな環境の中で生き抜いて来た子と、真剣勝負で毎日戦い抜いてきましたから、お試し行動の対処の方法については、プロ中のプロです。


かずお君とは、結局90分間、パソコンを使って3年生の理科の学習をしました。 昆虫の体のつくりについては、たぶん昆虫学者も真っ青なほどハイレベルの認知ができたと思います。、

乾電池と豆電球の回路の接続についても、4年レベルの内容の学習ができました。


こうして90分の指導は終わりました。

彼にとっては、きっととてつもなく、長い長い90分だと思います。

うちの教室には、セコムのTVモニターがあります。

90分が終わり、モニターにご両親の乗る車が映り、やがて歩いて教室にやってくるご両親のが見えると、かずお君の顔に、子どもらしい笑顔がおもいっきりはじけました。

そこには、90分逃げずにやりとげた、彼の満足感がぼんやりと浮かんでいるように思えました。

かずお君、一歩大きくなったね。

ふ~、私も大切な第一歩を切り抜けたということろでしょうか?

一度、厳しい顔で 「いい加減にしなさい」 と叱ったタイミング、あれで良かったかどうか、心の中に不安がないと言えばウソになります。

指導の後の相談で、ご両親に、「今日の指導の後で、かずお君がご家庭でどんなリアクションをされるか教えてください。それによって次回の組み立て考えますから」 とお伝えしました。

数時間後、お母さんから以下のようなメールが届きました。




今日は大変お世話になりました。
ありがとうございました。


先生のお話の中で、次回の本人の気持ちをおっしゃっていたので、実は私も聞くまで不安があったのですが、「楽しかったよ!」という返事が返ってきました。「虫のパズルが楽しかった。」「5分位しかたっていないと思ったら一時間半なんてあっという間だったよ。(これはちょっと強がり?)」ということで、私が「次は・・29日だね。あ、ところでどうする?」と、少しとぼけて聞いたのですが、「もちろん行くにきまってんじゃん。」と言っていました。

かずおは、ご覧になった通りあまり気を遣ってのコメントをする子ではないので、本当に楽しかったのだと思います。
今一番頭の中にある「動物の森」のゲームに出てくる、最近捕獲できるようになった「サソリ」と「タランチュラ」を印刷していただいていたので、「やっぱりそこかぁ」と、家でも一緒に説明してもらいました。

先生のことも「優しい先生だった」と話してくれました。
帰宅後、先生のプロフィールを見せていただきながら、「先生クイズ!」を少しだけ一緒にしました。
先生にお子さんが娘さんが三人いること、名前は「ゆ」の部分だけ正解でしたが、犬がいて「シン」という名前なこと、先生の好物は「ラーメン」(とんかつは忘れてました。)ということも教えてくれました。

かずおは、初めての場所と人が特に苦手で、不安や緊張がハイテンションという形で表現されてしまうところがあるので、実は最初の別れ際、「やっぱり行っちゃだめ!」となるかも・・と一瞬脳裏をよぎったのですが、思っていたよりもすんなりと離れることができたので、私たちとしては「大丈夫そうだね。」と、安心してお任せすることができました。

帰宅後は、テンションの高さが少し残っていて、多弁だったり声の大きさが大きいところはありましたが、とても楽しい話ばかりです。

きっと、回を重ねるごとに、本人も見通しがついて、不安も少なくなってくれると思います。
ただ、慣れるまでの難しさと、慣れてからの難しさなど、課題も山積みになるかと思うのですが・・、私たちも家でできることなど、一緒に協力させていただきたいと思っています。

お気づきの点がありましたら、是非遠慮なく教えていただけたらと思います。
また、家や学校でのことも、参考になることがありましたらお伝えさせていただきたいと思います。
私たちの願っている本人の成長は、きっといつの間にか「そう言えば・・前はこうじゃなかったよね。」というように、長い期間をかけて、気づいて感じていくものだと理解しています。

どうぞ、これからも末長く、よろしくお願いします。




ふ~、最後まで同じスタンスで、寄り添うことができて本当に良かった。

かずお君は、言語ではなく、90分の活動の中の私の所作の一つ一つの中から、私の姿勢をずっと感じ取り続けたのです。

マイナス行動の子ほど、通じ合った時のリターンは大きいものがあります。

私たちはこうした 「真心」 を子どもに伝え、その 「真心」 が、子どもを育て幸せにしていくのです。

こうした営みこそが、教育のダイナミズムです。


そういえば、前日初めてこの教室にやってきた すずかちゃん(=仮名・小1)も、教室に入ると真っ青な顔をしていましたが、45分が終わるとるんるんで帰って行きました。

お姉ちゃんのちなつちゃん(=仮名・小6)は、最後にご褒美で作成したクラフトで、すっかり心が通じ合ってしまいました。


教育は、希望をもって一つずつ積み上げていく営みです。  医療は、科学的な判断に基づき、的確な治療を行う場です。

どちらがどうということではなく、子どもの幸せと成長のための、この双方向をうまく選択し、コーディネイトしていくのが親のつとめです。

治療教育的なかかわりという、ハイレベルな判断を必要とするケースには、こうした2つのフィルターを通して、もう一度そのことを見つめ直してみると、見えてくる何かがあるのではないかと私は思っています。


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