行動の安定とコミュニケーションとの深い相関
2019-01-23

今からもう10年以上の前の話になります。
私が初めて発達支援の個別指導教室を開いた時、申し込みが殺到して、一日に数名の子どもの新規レッスンを行ったことがありました。
元来、初めての環境が苦手な子が多いのに加えて、私の指導技術も経験もそれに足るものではなかったため、それはそれは厳しい1日となりました。
おそらくは、生涯忘れることの出来ない1日となったのでした。
そのうちの一人が今年高等部の卒業を迎えました。
当時、行動面の課題が大きかったこの子も、知的にも行動面でもその後大きな成長を見せ、実習などでも優れた実績を残し、4月から事業所の一員として働くことが内定しました。
彼と初めて心がつながったのは、小学校の時のバイキンマンのおもちゃでした。
このこときっかけに、彼とは深い絆ができ、その後衝動的な行動は一切見られなくなりました。
以来10年にわたって、サポートは続いているのです。
就労後も、先生の所には定期的に会いに行かせていただきたい、
ご両親は私にそう、おっしゃてくださいました。
私とこの子との関係は、決して言葉のやりとりによって深まったものではありません。
「君には、君の果たすべき役割があってこの世の中に生を受けたのです。」
「あなたには、誰かのために、何かのことで役に立ち感謝される存在になるという使命があるのです。」
そんな言葉を一度として口にしたことはありませんが、私のまなざしも、手のぬくもりも、すべてそこからわき出たものであったのです。
口数の少ない子ほど、そんな感性は豊かなものです。
行動の安定しない子ほど、心の中に繊細な気持ちを宿しているものです。
当初不安定だった子のほとんどは、やがて私に寄り添い、手をにぎってくるようになりました。
衝動性のはげしかった子ほど、寄せる思いはやがて深くなっていきました。
すべての子どもは、信ずるに値する子ども、
それが子どもの心に伝えることができてこそ、真の教育者、
私の信念は、今でも脈々と心の中で息づいているのです。