発達の課題のある子どもが リアルな子ども集団から学んでいくこと (通常学級での育ちの魅力)
2008-08-02
夏休みになったということあって、学童保育の子どもたちに、100円ショップで買いそろえた電車のおもちゃをプレゼントしました。もちろん太郎君は、乗り物系のマニアですから、だれよりもその鉄道おもちゃに食いつきました。
あまりにも好評で、電車の取り合いになり始めたので、一人に2両はプレゼントして、名前を電車に貼り付けました。
自分の電車ということで、ますます子どもたちは、電車遊びに夢中になっていきました。
車両は個人持ちになりましたが、線路や駅や踏切は、もちろん共有です。しかし、乗り物系マニアの太郎君は、どうしても全部を自分のもののように使いたくて仕方ありません。
しかし、2年生の健太君たちも、今回ばかりは引き下がるわけにはいきません。
そこで、当然のようにけんかが始まってしまいました。
たぶん、こんなふうにリアルな次元で、太郎君とみんなが向き合ったのは初めてではないでしょうか?
私たち指導者は、絵カードなど、太郎君にわかりやすい方法で、おもちゃを使うときのルール、してはいけないこと、困ったことには暴力ではなく 「先生に言う」 ということなどを教えました。
まわりの子どもたちも、真剣にそのようすを伺っていました。
しばらくすると、最初は「そんなのやらな〜い」と、全然興味を示さなかった女子軍団が、「私たちにも電車、ちょうだい〜」と、やってきました。
たくさん線路はあっても、最初はつながりのないバラバラのパノラマでしたが、大きい学年の子や女の子まで参加し始めると、保育室いっぱいに広がる、結構まともなパノラマに変身してきました。
でも、太郎君は、まだぜ〜んぶ、自分の物でないと気が済みません。せっかくみんなで協力して作った、鉄道パノラマを、興奮した赤ちゃんのようになって壊してしまいました。
こうなると、女の子も大きい学年の子も黙ってはいられません。指導員の顔を伺って「やってもいい?」と、おそるおそる尋ねると、指導員は 「やっちゃいなさい」 と答えてしまいました。(何と素敵な感性の指導員でしょう)
ここで、太郎君は、大きい学年の子や女の子に囲まれ、こっぴどくしかられました。
暴力こそ振るいませんでしたが、全員一致団結して立ち上がっていますから、太郎君ごときでは、ひとたまりもありません。
たちまち、太郎君は泣いてしまい、ジ・エンド。 壊されたパノラマは他の子どもたちによって、粛々と修復されていきました。
太郎君は、10分ほど泣いていましたが、見るといつの間にか復活して、そのパノラマの中で、自分の電車を走らせています。さすがに、今度は破壊行為はできません。そういうことをすると、どんなことになるのかを、こうした体験を通して学習したのです。
ソーシャルスキルトレーニングを100回やったとしても、こうしたこのリアルな体験のインパクトには到底及びません。
私は、その後も、太郎君の表情と、学童集団の空気を注意深く見守っています。
今は、朝、園長と二人で学童の子どもたちをバスで迎えにいっています。その朝の表情は、さわやかそのものです。この子の、本当にすばらしい宝物です。
先日は、朝ちょっと時間があったので、公園まで内緒でドライブに行き、養護学校で買ったミニトマトと、コンビニで買ったおかきをに食べ、わずか15分くらいでしたが、一緒に遊びました。
言葉使いのこと、差別的な態度、子ども集団はある意味とてもシビアで残酷な面があります。それがエスカレートするといじめとなり、取り返しのつかない深い傷を子どもの心に残します。
私は、どんなに口は悪くとも、太郎君は学童保育の大切なメンバーの一員であると、みんなから受け入れられていると信じています。そうでないと感じたら、人格を傷つけるような発言や行動があったら、決してそれを見逃さない信念と覚悟だけは持ち合わせています。
大切なメンバーだから、家族のような同じ仲間だから、いけないことは怒る!
大げさに言えば、このことによって、太郎君の社会性発達の可能性の道は大きく開けたと考えています。 社会性を育成するための、リアルな実践の場が形成されたと考えています。
通常学級の捨てがたい魅力と可能性が、ここにあるのです。
太郎君のお母さんが、このことを理解してくださったのも、本当にありがたいことだと思っています。
私は、太郎君も含め、この学童のメンバーがますます好きになっています。
指導員さんには、苦労もかけていますが、この部屋にいると心がなごむ不思議な空間です。
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