苦しい場面こそが 子どもを育てる

 2012-02-27
この春、中学への進学を機会に私の所からも、卒業する子が何人かいます。

どの子も、教室を始めた当初からずっと通ってくれた子で、それぞれに忘れることのできない大切な思い出があります。


まさお君もその一人です。

4年生の時から、3年間通ってくれました。

籍は今でも支援級にありますが、6年の2学期からは完全に通常級での学校生活となり、「卒業証書を受け取る時には、通常級の先生から名前を名前を呼ばれたい」 というまでになりました。


この教室に通い始めた頃のエピソードは、たくさんあります。

初めてレッスンを始めた日に、「親に見捨てられた~」 の迷言?を残したのも、この子です。

90分のレッスンで、1枚のプリントをするのにも骨が折れたものですが、この頃は事前に決められた学習を毎回完全にやり遂げるようになりました。

本当に楽になりましたし、今では毎回のレッスンが待ち遠しいようになりました。

苦労が多かった分、感慨もひとしおです。


ある特定の分野には、とても優れた能力を示す反面、あいまいな言い方、婉曲な言い回し、場の状況や微細な感情理解ができにくく、話す言葉の表現がストレート過ぎて、とかくトラブルが絶えないタイプのお子さん、

それでいて、平素の言動とは裏返しの、とても傷つきやすくデリケートで繊細な心、

私は、何人ものそんなタイプのお子さんと、これまで一緒に歩んできました。


そうした生活面でのトラブルは、小学校中学年くらいから表面化するケースも多いように感じました。


そんなタイプのお子さんに、私がなすべき役割、

それは、

① 毎回の生活の出来事に傾聴し、受け止めてやることにより、事実と経過を整理して示してやること

② 共感的立場で、あるべき方向をさりげなく伝えながら、本人に意思決定をさせること

③ その子の良さと優れた点を、具体的な例を挙げながら評価すると共に、苦手なこともあるからこそ、自分の優れた点があることをとらえさせること

④ ご家族の代弁者として、自分がいかに家族から愛され、期待されている存在であるのかを伝えること

⑤ 肯定的な自己理解の力を育てていく一方で、自分の苦手な部分を受け入れ、別な方法でそれをコントロールしながら、他者を受け入れる心のゆとりを培っていくこと

そんなふうに考えて、これまで、毎回のレッスンに臨んできました。


昨日は、2年生の男の子のレッスンがありました。

お父さんは、外科のお医者様で、前日夜7時から、大動脈解離の12時間の手術を終えられて、おそらくはほとんど睡眠をとられることもなく、私の教室にお子様を連れてきてくださいました。

「患者様の容体にによっては、明日のレッスンに行けなくなることも考えられます。その時には、すぐに連絡します」

前日のメールには、そのように添えられていました。

きっと、朝までの手術であったに違いありません。

実際にお越しになったお父さんの表情には、ギリギリの人の命をさずかる責任の重さ、医師としての使命感、そして、大切な我が子にかける親としての気持ちが、深く刻まれているようでありました。


そうまでして、私の所に来てくださるというそのお気持ち、

これで、私の心のスイッチが入らないわけはありません。


我が子の課題について、十分過ぎる程、精査に受け止めておられるご両親、

ならば、支援者として、どんなに苦しくとも、私が胸を張って指し示すことは何か?

私には、主体者に成り代わることはできくても、そのご家族を支え続ける責務があると考えています。


私はこれまで、どん底の淵で、もうダメだと身を捨てる所から、浮かび上がってきたご家族に何度もめぐり合ってきました。

今、厳しい現実に向きあっておられるその時だからこそ、苦しくとも目の前に指し示す道しるべが必要です。

「多くの子どもの育ちにかかわってきた私の実践から見れば、この子は、将来きっと社会のリーダーとして活躍する子に育つと思います」

私が、そう申し添えると、明らかにご両親の表情に変化が見られました。



まさお君とのレッスンは、3月の終わり間まで、あと2回、

卒業式も、セレモニーもなく、いつも通り教室を後にしていくはずです。


子どもが、そしてご家族が、自分の足で力強く歩むことができるようになったら、私の役割はそれで終わりです。

やがて、このご家族も、いつかは私の所から巣立っていかれる日がくるに違いありません。


あるべき形、指し示す道しるべが、そんな簡単に見つかろうものなら、こんなに楽なことはありません。

だからこそ、一瞬一瞬に心血を注いで、子どもに向き合っていかねばなりません。


その日、その時を迎えるために、日々の学習のやりとりの中で、一体何を積み上げていくべきなのか?

そこを大切にしていきながら、私は今日も、子どもたちと一緒に歩んでいきたいと思っているのです。




この記事は、「特別支援教育人気記事ランキング1位」に選ばれました。 (2011-2-28)




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Author:SHINOBU
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